映画「パーフェクト・ルーム」のシナリオ分析
今回は『パーフェクト・ルーム』という映画のシナリオ分析をしたいと思います。
この映画を選んだ理由は、サスペンスであるというのとニコ動にあったというそれだけのものです。ではいってみましょう。
ミニッツライナー
まずはこの方法でシナリオ全体の構成を見ます。
ミニッツライナーとは?
シナリオ分析法の一つ。映像内で起こった事を文字にして、一分をおよそ一行で書いていきます。その際には見直した時に分かりやすいよう、出来るだけ簡単な文章にします。
エンディングまで99分ある映画なのでそれなりの分量になっています。
スタート
- 雨が降る夜の街
- 車の上に人が落ちてくる、顔は見えないが皮の手袋をしている。ビル上階に人影
- ビンセントが取調べを受けている、今朝の出来事を話せと言われてタイトル
- ルークが買い物袋を持って歩いている。時折、男女の情事が映る
- 部屋(ロフト)に入るルーク、女の死体(顔は見えない)を発見
- ビンセントがロフトに入る、女の死体に驚く
- ビンセントは女を知らないと言う、状況から女は鍵を使ったとルーク
- ルークの取調べ、ルークの頬にアザがある、ドアにぶつけたと供述。捜査官がロフトを五人で共有していたのでは? と言うが否定
- クリスがロフトへ入って来る、警察を呼ぼうと言うが止められる
- マーティがロフトへ、クリスが女の顔を見る、知らないと言う
- 一年前、ビル完成のパーティ。ビンセントたちが妻と出席
- パーティにアンの姿
- アンがクリスに話しかける、それを見ている妻
- フィリップが二人の女を連れてパーティに出席している
- ビンセントが四人(クリス・ルーク・マーティ・フィリップ)にロフトを教える
- ロフトに戻る、取り乱すルーク
- ベッドに書いてあるラテン語のメッセージを見つける”運命が我々を結び付ける”
- 文法の間違いを指摘するクリス
- フィリップがロフトへ来る、つかみかかるルーク、引き離される
- フィリップの結婚式
- クリスがアンを見つける
- フィリップに鍵を渡すビンセント
- マーティとルークも鍵を受け取る
- 妹のゾーイに下品なジョークを言われて怒るフィリップ
- クリスがアンに話しかける
- クリスを誘惑するアン、誘惑をかわすクリスだが一緒にコーヒーを飲まないかと言われる
- クリスがビンセントから鍵を貰う
- ロフトに戻る、全員が鍵を持っているか確認するビンセント。クリスは家にあると言う
- 夫婦だけで集まっての会食
- クリスの妻は裏に居る
- クリスの妻が参加するが直ぐに席を立つ
- マーティが例え話としてロフトの話をする、がイスを倒される
- フィリップがクスリをやっている。好きな人はいないか? とルークに問う妻
- ロフトに戻る、ビンセントが誰かの陰謀ではないかと言う
- 過去、クリスとアンの情事。アンに恋をしたと言うクリス
- 妻と別れると言うクリス
- アンが自分は売春婦だと言う
- マーティの取調べ、女が家に来て不倫がバレたと話す
- サンディエゴでの出来事、バーでデイナーが話し掛けて来る
- 議員が女を連れてバーへ来る、口止めに仕事を回す話をする議員
- アンに電話するクリス、妻に見られて疑われる
- バーにサラが現れる
- 屋上のプールに移動する、ビンセント・ルーク・マーティ・デイナー・サラ
- 意気投合しているマーティとデイナー、裸になるビンセントとサラ
- プールで抱き合うビンセントとサラ、それを見るルーク
- マーティとデイナーがやってる
- サラを振るビンセント
- ロフトに戻る、呼び鈴が鳴る。ロフトを買いに来たという業者が来ている
- ロフトを売ると言った人物はサラ、死体もサラだとビンセントが言う
- 今朝、ロフトにサラを呼んだと言うビンセント。殺してはいないとも言う
- 過去、アンをつけるクリス
- 尾行がバレ、アンに鍵を渡すクリス
- ルークの取調べ、ビンセントに気があったのでは? と問う捜査官
- ロフトに戻る、ビンセントをナイフで襲おうとするフィリップ、抑えられるがビンセントがナイフを触る
- 過去、妻に捨てられるとビンセントに泣きつくマーティ
- ロフトに戻る、死体を運び出すと言うビンセント。却下される
- 過去、フィリップの暴行現場
- レイプされたと言う女
- 売春婦に金を握らせるクリス
- ロフトに戻る、ルークがロフト内を隠し撮りしていたのをバラす
- フィリップがルークを殴る。全部見ていたと言うルーク、今まで通り黙っているとも
- カジノのパーティ
- クリスと妻の冷めた関係
- 議員に脅しをかけるビンセント
- マーティと妻の口喧嘩
- フィリップと妻の口喧嘩
- クリスがアンを追って女子便所へ入る
- 議員秘書(?)も入って来る、アンが誰かに金を貰ってクリスの元へ行ったとほのめかす
- フィリップがゾーイと一緒に居た男に暴力を奮う、追い出されるフィリップ
- 泣くゾーイを慰めるビンセント、それを見て怒るサラ
- 選択肢を減らすと言って妻の下へ向かうサラ、ルークに止められる
- ロフトへ戻る、妻たちに裏切られたと言うビンセント、目まいがして倒れる
- 手袋をするクリスたち、手錠や血文字でフィリップを責めるクリスたち。ルークが遺書を見せる
- 過去、今朝? サラが薬を飲んで死んでいる、集まっているクリス・ルーク・マーティ・フィリップ。ビンセントは呼んでいないとルーク
- 盗撮していた事をばらすルーク、マーティの妻と寝るビンセント
- ゾーイと寝るビンセント、アンと寝るビンセント
- アンを買ったのはビンセントだと話すルーク
- 全員がビンセントをはめる事に同意する
- クスリをやりながらサラを手にかけるフィリップ
- ロフトへ戻る、ビンセントに薬を飲ませるクリスたち
- サラの横で眠らされる
- ビンセントの取調べ、ハメられたと言うビンセント
- ビンセント以外にはアリバイがあると捜査官が言う
- 捜査官がクリスに、サラは自殺ではなく手首の傷だと言う
- 更に遺書もない、と。解放されるクリス・ルーク・マーティ・フィリップ
- ロフトへ行くクリス、ルークが居る
- クリスが遺書についてルークに聞く、不動産にかけた番号がルークにかかる
- 遺書がゴミの中から見つかる、遺書はルークが書いたとクリス
- サラが好きだったと話すルーク
- 過去、サラと話すルーク、振られる。それを見ている妻
- サラを眠らせ、インスリンを注射するルーク
- サラは今朝まで生きていたと話すクリス
- 包丁でクリスを脅すルーク
- 揉み合って包丁を落すルーク、クリスが手にする
- ルークが自ら飛び降りる、車の上に落下
- 半年後、再縁したマーティ夫婦、クリスを呼び止めるアン
- 仕事はやめたとアン、クリスをコーヒーに誘う
- ED
構成
全体
結末シーン、1~2分。
回想開始、五人の男たち登場とロフトの紹介、3~15分。
二人の金髪女、死体はサラだとビンセントが言う、16~47分。
ロフトを買いに来た業者、47~50分。
クリス・フィリップ・妻たちへの疑惑、51~71分。
ネタばらし、73~82分。
新たな疑問、82~89分。
ルークの最後、エンディング、90~98分。
どこで分けるか悩むところですが、とりあえずこんな感じで区切ってみました。序破急で言うと序が15分までで破は71、急が残りといったところでしょうか?
本当なら中心になる人物の説明にもっと時間を掛けると思うんですが、五人の男が中心になっているのでそうもいかないようですね。それに全員を視聴者は疑わしい目で見ているので余り説明がない方がいいんでしょう。
序盤でとりあえず男五人と舞台であるロフトが登場、死んだ女の謎を追って男五人への疑いが強まる。更に妻たちの犯行の可能性も出て来ます。そして真相が分かると同時に男四人の計画が動き、ビンセントが諦めたところで次の謎が浮かびあがる。そしてラストへと──。
大体こんな感じでしょうか。
普通の物語を楽しむというより、誰が犯人か当てるという見方がこの作品の正しい楽しみ方なんでしょう。
五人の男たち
14分で男五人が登場します、そしてロフトの説明が15分。男五人が中心になっていますが、フィリップが登場するのは14分でかなり遅いです。取調べのシーンがなぜかフィリップだけなかったりします。
容疑者は五人なんですが、スポットの当たり方に差がありますね。一番動きがあったのはビンセントでしょうか、それともクリス?
三つの時間
作中では取調べを行っている取調べ室と、そこで語られた(思い出した)ロフトでのやり取り、更にロフト内での会話から過去に戻った回想映像が流れています。
少々やっかいな構成ではあるんですが、混乱する事はほぼなかったと思います。取調べ室でのやり取りが少なかったのと、過去の回想が途切れる事なくエピソードごとにまとまっていたのが理由だと思います。
過去の出来事
- ビル完成パーティ
- フィリップの結婚式
- 夫婦だけの会食パーティ
- クリスとアンの情事
- サンディエゴでの出来事
- アンをつけるクリス
- フィリップの暴行現場
- カジノのパーティ
時間がハッキリしているのは一年前のビル完成パーティぐらいでしょうか。前後関係をハッキリさせようと思えばできるのかもしれませんが、そこまで気力がありませんでした。
クリスとアンのエピソードが二つありますね。ミスリードになっているとは思うんですが、それが最後の(一応)ハッピーエンドにつながっています。
見せ場
ラテン語の意味深なメッセージ、謎の殺人。サスペンスが売りなのは間違いないんですが、ロフトという場所が不倫用に作った物であったりと中々に下世話で情事に満ちた内容となっています。今の日本では受けないでしょうかね。
それ以外にもケンカっぱやいフィリップというキャラクターや妻たちの表情も恐ろしい人にはたまらない物だと思います。
その他
妻たち
ビンセントが妻たちの犯行を口にしましたが、妻たちにはそれほどスポットが当たっていないように感じました。夫婦関係を個別に取り上げたシーンは一組辺り一シーンか二シーンぐらいでしょうか。
五組居るので仕方ないとも思えますが、それにしても少ないですね。妻たちの視線が長くカメラに留まったのは62分からのカジノパーティのシーンぐらいだと思います。
ルークがカメラを仕掛けた理由は?
ルークがキーパーソンであるのは間違いないんですが、動機に関してはいまいち納得行かない点もありました。サラが好きだったようですが、ならロフトを盗撮していた理由はなんだったんでしょう? 捜査官の言う通りビンセントにも気があったんでしょうか、それともただの盗撮好き?
謎解きではないサスペンス
トリックや謎解きを扱うタイプの作品ではありませんでした。最初の段階で男五人にアリバイはなく、誰にでも犯行は可能になっています。
なので後は男女関係のもつれやスキャンダルがあれば、視聴者にこいつが犯人では? と思わせられる構造になっていると思います。
というか、初めて映画のミニッツライナーに挑戦したんですが、余りに量が多くてちょっとしんどいです。もう少しまともな分析が出来るかと思ったんですが、残念ながらそれほどの精度は持てそうにありません。
次はやり方も含めてもう少し考えてからやろうと思います。
という事で終わります。