アニメ「絶園のテンペスト」のシナリオ分析
今回からアニメの『絶園のテンペスト』という作品を扱っていきたいと思います。理由は誰かにおススメされていたのと、完結した作品の方が放送中の作品より都合がいいからです。
ただし全24話とそれなりに長いので、一記事で二話分をまとめて分析したりするかもしれません。
ミニッツライナー
しばらくはこの方法を続けます、説明は以下。
ミニッツライナーとは?
シナリオ分析法の一つです。全体像を俯瞰して見る為に映像内で起こった事を「誰が、何をした」というシンプルな形にして、一分をおよそ一行で書いていきます。
しかしこの方法は完結した作品を扱うのに向いています。一話ずつ観ながら分析を行うので、重要なポイントやフラグを見逃す事があります。ご了承ください。
スタート
- 登校中の吉野、不破兄妹が挨拶して過ぎる。妹(愛花)はスルー
- 吉野と愛花の独り言「世の中の関節は外れてしまったーー」シェイクスピアの引用
- タルから女の子(葉風)が出て来る
- 左門による葉風の説明、島では魔法は使えない・島は見つからない・干からびて死ぬしかない
- 彼女からのメールを読む吉野、セロリ食べない
- 不破について知らないかと教師に聞かれる吉野、知らないと返す
- ヤンキーに絡まれる吉野、財布を取られる。回想、真広が居れば15人を相手にした
- 誰かの墓参りに来た吉野、エヴァンジェリン山本に声を掛けられる
- 真広について聞かれ、銃を突きつけられる
- 真広が人助けしたという情報、真広には妹が居た。ここの墓が妹の
- 回想、妹が死んだ理由を吉野に問う真広。犯人は捕まっていない
- 辻褄を合わせる、と言う真広。回想戻る、アゲハチョウが飛んでいる
- 傘で銃を弾く吉野、しかし銃は二丁あった。真広が急に現れて山本を蹴る CM
- 山本が真広を銃で撃つ、が弾が止まる。魔法?
- ゼロ距離でも銃は通じず、真広に沈められる山本
- 人が倒れている、体が金属になっていく、黒鉄病。街中の人が病気にかかって倒れている
- 真広の側に居た人間はセーフ。魔法使いの一族が何かしたのが原因、と真広が説明
- それを止められるのは一人、葉風。その葉風と人形で連絡を取る真広
- 再びアゲハチョウが大量発生。真広が人形を拾った経緯、それをビンに入れて流した葉風
- 真広の目的は魔法使い(葉風)と取引して妹を殺した犯人を見つけること
- 恋人の話を真広に振られ、はぐらかす吉野
- 海から巨大な鉄の玉が出て来る
- 彼女からのメールに愛花の写真が付いている。冒頭の台詞のリピート
- OP
構成
全体
現状の説明1~7分。
異変に次ぐ異変(山本に襲われる、魔法を使う親友、黒鉄病、海から出て来た鉄の玉)8~23分。
CMは13分辺りで山本を蹴り倒した後です。
序盤で一応、現状の説明はしてるんですが、仲が悪いらしい吉野と愛花が同じ詩を口ずさんでいたり親友であるらしい真広が吉野の事をいい奴でも悪い奴でもないと言っていたり……。
6分の教師の台詞は明らかにおかしくて、真広が一ヶ月前に既に退学届けを出していると言っています。じゃあ登校時の会話のやり取りは何だったんだろう……? となってしまいます。
最初はそれぞれのキャラクター説明をする、というのが基本なんですが、その段階から何かが壊れている。説明しているけど説明になっていないというおかしな事になってますね。
そんな静かなやり取りがしばらく続いてから、8分でいきなり知らない人物に銃を突きつけられる。この辺りから一気に事態が急転します。
他のアニメでもそうでしたが、7~8分で何か仕掛けるというのは一つのパターンなんでしょうか?
見せ場
アニメーションでのアクションシーンは素晴らしかったです。あれだけの動きを見せられたらぐうの音も出ません。原作の漫画でどこまで描かれていたかは不明。
後は謎ですね、本当に謎だらけです。死んだ妹とその妹と一緒に登校していた真広と、更にその妹と付き合っているらしい吉野。それとは別件でしょうが、黒鉄病とその原因になった一族も良く分かりません。左門という人物がそれほど悪人に見えないので他に悪玉らしき人物が出て来るんでしょうか?
他にもアゲハチョウがなぜ大量発生するのか、その理由はもう説明されてましたっけ? 海から出て来たあの玉は誰が何の目的で出したのかも分かりません。
えっと、1話の段階で見せ場になっているのはアクションと謎。それに吉野という主人公のミスリード辺りでしょうか。
一部の女性陣には別の部分でも見所がありそうですが、そこには触れません。
役割
1話はとにかくインパクトで先を見て貰うようにする、そして後は説明というのが定番なところでしょう。インパクトの点では成功していると思いますが、説明の点ではあやふやなところがありますね。もちろん意図的ですが。
興味深いです。
人物の変化
とりあえずは現状説明なので変化らしきものはありません。しかし練習がてら書いておきます。
吉野 巻き込まれる
真広 妹の復讐のために魔法使いと契約した
葉風 島に閉じ込められたが、ビンを流して真広を捕まえた
その他
土台語り
登場人物や舞台設定を作り込むタイプの作者さんのようです。ここから徐々に人物の過去や世界設定が明らかになって行くんですが、それをどうやって見せていくのか? 情報の出し方に興味があります。
いくら作りこんだ設定でも口頭で全て説明してしまっては余り面白くないからです。
なので土台作りは大事なんですが、どれと同じぐらいその土台をどう語るかというのが問われる事になります。
目的の違い
主人公の吉野は何かを偽っている、そして親友の真広は復讐のダークヒーロー。更に島に追放された魔法使いは一族の陰謀を止めようとしている?
それぞれの目的がチグハグで、しかしそれが絡まり合っている印象です。中々に面倒ですね。
これらが最終的にどういうオチになるのか、どうやって収まるのか良く分かりません。その辺りも楽しみなんですが、やはり一般受けは余りしなかったんじゃないかとは思います。
と、ちょっと長くなっているのでこの辺りで終わっておきます。
悪役的な存在は居るみたいだが悪く見えない